国立劇場 『通し狂言 隅田川花御所染 女清玄 』

若手の大抜擢での公演であるが、残念ながら若手の魅力が伝わってこなかった。

入間家の執権粂平内左衛門(くまのへいないざえもん・実は平家の残党)がお家乗っ取りを企み、入間家の桜姫の許婚頼国を殺す。平家側の北條によって滅亡した吉田松若丸は魔界から現れ平内と手を組み頼国に成りすます。松若丸は桜姫の姉の花子の許婚なのであるが、行方知れずとなって三年立つため花子は剃髪し清玄尼となる。

清玄尼は夢の中で松若丸と結ばれる。清玄尼は清水の舞台から飛び降りる。松若丸が清玄尼を助ける。清玄尼は松若丸を恋い慕う余り仏の道を踏み外して行き、清玄尼に思いを寄せる船頭の惣太に殺されてしまう。妹の桜姫も許婚の松若丸を追い松若丸に巡り逢うが、二人に嫉妬する清玄尼の霊が現れ、苦しめられる。

大詰めで、吉田家の郎党軍助や忠臣粟津六郎により清玄尼の煩悩の世界も打ち払われるのである。

短く整理するとこんな感じであるが、実際には、それぞれの思惑があり一筋縄ではいかない話である。中心は深窓のお姫さまが突然一人の男に対する恋慕の情から狂い始めるわけで、そこにお家乗っ取りの話が加わるわけであるが、上手く回転していかなかった。それは、複数の若手抜擢と、25年ぶりの復活狂言ということで基本経験の薄い若手が新たに役作りをしなければならなかったことにあると思う。福助さん(花子・清玄尼)一人で引っ張る形となった。錦之助さん、翫雀さん、男女蔵さんが出てくるとほっとしてしまう悲しさ。宗之助さんは形になっていました。何を言われようと大きな役をやり通されたのですから、次の挑戦の機会を松也さん、新悟さん隼人さん、児太郎さん達は虎視眈々と狙って欲しいと思います。

残念な事に赤坂の勘九郎さんの舞台は観れなかった。新しい歌舞伎座となるが若手の歌舞伎を見続けると、歌舞伎を成り立たせていく役者さんの修練の必要時間の長さと脇役の重要性を感じてしまう。一つ一つぶつかっていくしかないのであろう。

こちらもまとめつつ本当にそうなのかと自分の見方、感じかたに疑問視しつつ、ぶつかっているのである。次の時にはもっと自信をもって納得したいと願いつつ。