宇都宮と大谷地底探検

餃子の街宇都宮であるが、自転車の街宇都宮でもあった。『サクリファイス』を読まなければタウン情報誌を見ても気に留めなかったであろう。プロサイクリングロードレースチーム「宇都宮ブリッツエン」は特定の企業に依存せず、地元企業や個人支援者に支えられているチームで、日本初の地域密着型とのこと。

古賀志エリア・森林公園は、ツール・ド・フランスなどの世界トップクラスの選手が一堂に会する「ジャパンカップサイクルロードレース」のコースの一つになっている。

宇都宮は<二荒山(ふたらさん)神社>の門前町として栄えたまちで、この神社は源頼朝や徳川家康などが戦勝祈願したと言われている。JR宇都宮駅から歩いて15分位であろうか、この近くに評判の餃子屋さんがあるが、お客さんが並んでいるためここで食したことはない。

大谷石の採石された大谷地区へは、バスなら最初に行っておいたほうがその後の計画にゆとりをもてる。大谷石は二千万年前に火山の海底爆発でできた凝灰岩(ぎょうかいがん)の一種で、大谷石が有名になったのは、旧帝国ホテルに使われ、関東大震災で耐震と火災に強かったことである。

<大谷公園>、<平和観音>、<大谷寺>と石の自然と人工の芸術郡である。<大谷寺>は弘法大師開基といわれ、古代の横穴に建てられた観音堂の中には平安時代に造られたといわれる「大谷観音」(千手観音立像)があり、その他十体の磨崖仏が並んでいてこれまた大きくて見事である。そこから、<大谷景観公園>へ向かいそれこそ景観を楽しみながら<大谷資料館>へと進む。<大谷資料館>は石を採石した後の地下が石の神殿のような空間となっていて灯りに照らされた内部は神秘的である。

市街地にも大谷石の建物は幾つかあるが大きな建物としては昭和初期のカトリック教会の<松ヶ峰教会>がある。こちらは東武宇都宮駅方面で、JRと私鉄東武は離れているので見るとなるとかなり歩くことになる。タクシーを使うか飛ばすかである。

友人から大谷石の採石した地下をゴムボートで探索する旅があり、なかなか予約出来ないが、キャンセルがあったから行かないかと誘われて即決である。

JR宇都宮駅からバスで<道の駅 ろまんちっく村>へ移動、そこで案内人と他の参加者と合流してマイクロバスに乗り換えて出発である。この企画は地質調査をした個人の私有地へお邪魔するのである。最盛期には200位の採石所があったらしいが、今は数ヶ所である。

途中大谷石の建物があるが、明治時代に建てられていて、一度も水洗いなどしていないのに綺麗である。汚れが目立たない。質の良い大谷石は、汚れにくいらしい。

休日なので作業はしていないが現在も採石している採石場を見学した。そこで、案内の方が、「ここはアニメの『天空の城ラピュタ』の一場面を思い出しますよ。」と言われる。上からみると凄い深さまで採掘されていて、足場から覗く形となり、採掘の機械などもあり、シータが天から降って来て、パズーが受け止める場面設定と似ているのである。「なるほど!」である。

採石していた石工さん達の休憩所も大谷石の小屋であるが、質の落ちる小さな穴があいている石を使っている。最初のころは手掘りでそれから機械化されているわけで、手掘りは手掘りならではの綺麗な線が残っている。縦に掘って行き、良い石の層が見つかると横に掘っていくのである。30年前に採石を止めその後地質調査で入ってみたら水が溜まっていたのである。そこで、地下クルージングを企画したらしい。

用意してくれた長靴、ヘルメット、救命具を身につける。小さな電気にぼんやり照らし出される水面に浮かぶゴムボートに乗る。電気の点いているところもあるが、ライトを照らしての深淵な雰囲気の中を8人づつのゴムボート二隻が静かに進む。天井の低い所は触ると湿気を含んでいてざらざらしている。違う場所に降りたち、さらなる採石跡へ向かう。低い所、階段が出来ている高く掘られたところなど、良い石を求めて掘り進めたのであろう天井の高低差があり急に広い空間に出たりする。

地下クルージングは30分位であるが、<大谷資料館>とは違い、石工さん達の労働の姿が想像出来、さらに、溜まった地下水から生きている自然の力を感じる。

何年か何十年かするとまた違っているのであろうか。この地下の冷気を使って夏イチゴを作ることに成功したようである。再活用の道を模索している大谷地区である。案内してくれた若い方も、新しい楽しみ方のアウトドアを捜している様子が生き生きとしていて楽しかった。

アニメ映画『天空の城ラピュタ』を見直した。こちらは青く光る飛行石である。海賊の女首領ドーラがたくましい。ドーラの息子が、シータがいずれママの様になるの?と心配しているのが可笑しかった。