『日本の伝統芸能展』

日本橋の「三井記念美術館」で国立劇場開場50周年記念の特別展として『日本の伝統芸能展」が開催されています。

これから先の開催予定に、2017年4月15日から『奈良西大寺展』があるのです。タイミングの良さに驚いてしまいました。「愛染明王像」も来られます。魔法の壺から魔法のジュウタンをだされて飛んでこられるのでしょうか。

いとうせいこうさんの西大寺の恋仏の文殊菩薩さまも、そしてなんと、みうらじゅんさんの恋仏の浄瑠璃寺の吉祥天さまもいらしゃいます。いとうせいこうさんとみうらじゅんさんの恋心の引力でしょうか。こちらは、その引力のおかげで再会できるのですからありがたやありがたやであります。お二人の『見仏記』を読みますと、恋する仏さまにたいする、その切なくも可笑しいお二人の様子がわかります。原文で読まないとちょっと微妙な表現を味わうことができませんので興味のある方は是非お読みください。

私が吉祥天さまにお会いした時のことはこちらにあります。お二人の発想からみると味わいの無いつまらなさの一例です。 亀山宿~関宿~奈良(4)

嬉しくて前置きがながくなりました。

本題の『日本の伝統芸能展』ですが、「雅楽」「能楽」「歌舞伎」「文楽」「演芸」「琉球芸能・民族芸能」の6つを柱としての展示ですが、基本的には「歌舞伎」が中心になってしまいました。

舞楽の陵王(りょうおう)の面がまじかに見られました。中国で武将が美し過ぎて兵士の士気があがらないため、恐ろしい仮面をかぶって戦いに挑んだという陵王にちなんだ舞楽に用いる面で目をかっと見開いて迫力があり、舞楽用ですので豪華絢爛という感じです。

小鼓の胴の部分が蒔絵になっていてその包みに<大和法華寺伝来>と墨書してあるという説明書きの<法華寺>の文字には、こちらも目をぱちっと開きました。今は三井記念美術館所蔵です。

興味ひかれたのは、阿国歌舞伎から始まる歌舞伎図屏風です。囲いの無かった舞台に能舞台を踏襲していたのが、竹矢来で周囲が覆われ、入口がねずみ口となり、三味線が加わり、やぐらも出来、京都の四条川原から江戸にも広がり「上野花見歌舞伎図屏風」(伝菱川師宣)では、中村屋のやぐらがあがり、やぐらの垂れ幕には<きょうげん 中村かんざぶろうつくし>と書かれています。この流れがわかる歌舞伎図屏風の展示でした。

このあたりから浮世絵になり絵師もはっきりしてきます。「中村座内外の図」(初代歌川国貞)定式幕が左端にまとめてつるされていて、黒御簾が下手にあり、舞台では <対面>が演じられ、五代目幸四郎の工藤、七代目團十郎の五郎、三代目菊五郎の十郎です。

役者浮世絵には初代右団次の佐倉宗吾の妻の霊の幽霊が描かれているものもありました。楽屋での役者たちの様子もあり、三代目三津五郎が所作事の振りつけを教えているところなど、役者の素顔がかいまみれます。

衣裳もあり、六代目菊五郎着用の松王丸の衣装は黒綸子(くろりんず)ですが、紫に変色していましたが、その紫も美しいというのはは品物が良いからでしょうか。今月の歌舞伎座の勘九郎さんの松王丸は銀鼠(ぎんねず)綸子の音羽系でした。七代目幸四郎着用の工藤の衣装は黒の木綿地にびっしりの錦糸の刺繍は織物のようです。琉球芸能の紅型(びんがた)の衣装の色が明るくて艶やかで、沖縄舞踏で使われる花笠の赤も綺麗でした。

なるほどなるほどと納得して楽しんで見てきました。