さらっと音楽映画

ピアノに引きよせられたので手もとの音楽映画をさらっと観なおす。映画『オーケストラの少女』(1937年)。ジュディ・ガーランド主演映画『オズの魔法使』(1939年)でのもう一人のドロシー役候補が『オーケストラの少女』の主人公役のディアナ・ダービンであった。

ディアナ・ダービンも愛らしい。娘のパッツィーは失業中のトロンボーン奏者の父を励ましつつけなげに頑張っている。父がお財布の入ったバッグを拾いそこからたまっていた家賃を払う。皆は楽団にやとってもらえたと勘違いし、父もそうだとウソをついてしまう。パッツィーは父のウソがわかりお金を返しに行く。落とし主の婦人は、音楽家の失業者が多いなら楽団を作ればいい、作ったら援助すると約束してくれる。パッツィーは父に話しみんなであつまり楽団を作るが夫人は気まぐれでヨーロッパに旅立っていた。そこからパッツィーの行動力に拍車がかかる。

実際の名指揮者レオポルド・ストコフスキーが出演し、演奏もたっぷり聴かせてくれる。望んでいた父たちの失業者のにわか楽団の指揮をストコフスキーが引き受けてくれる。パッツィーが歌う『椿姫』の「乾杯の歌」は見事である。誤解が誤解をうんで最終的には大成功というテンポのよさとパッツィーの活躍、そしてオーケストラの演奏を楽しめると言う音楽映画である。

昨年映画『ジュディ 虹の彼方に』が公開された。ジュディ・ガーランドの人生の終盤を描いたものである。内容は生活苦の中で子供を想う母親の姿などで同情的であったがもう少しジュディには堂々としていてほしかった。最後は感動的であったが。ジュディは『オズの魔法使』を撮影中から太らないようにとクスリなどで規制された生活であった。その体験がトラウマのようにジュディの心理的重圧となっている。ジュディに残されていたのは歌うことであった。ハリウッドの中でよく頑張り、ハリウッドを離れてからも彼女なりの歌う旅をよくつづけたと思う。

映画『月光の曲』(1937年)。ピアノコンサートが大盛況で終わる。その時小さな女の子が膝に乗せていた球形のキャンデー入れを転がしてしまい階段を下りてピアニストのそばまでくる。女の子の両親もそばに来て拍手しアンコールには「月光の曲を」と希望する。その両親とピアニストはかつて貴重な時間を共にしていたのである。その時のことをピアニストは周囲の人に語って聴かせるのである。

ピアニストは演奏旅行での飛行機が不時着し、ピアニストの友人ともう一人の男性乗客三人が近くの森に住む伯爵夫人の屋敷に滞在することになる。その屋敷には伯爵夫人と孫娘・イングリットと森を管理するエリックが住んでいた。偶然にも娘の両親はピアニストの月光の曲をきいて結ばれていた。しかし若くして二人は亡くなっていた。そして、イングリットとエリックもちょっとしたアクシデントが発生するが、月光の曲で結ばれるのである。

ピアニストは世界的ピアニストのイグナツ・ヤン・パデレフスキーが本人役で出演している。そのため演奏場面も本人であるがフイルムの保存が悪かったらしく映像も乱れ、最初の演奏場面は手と音楽が合っていない。今回は、観るよりも音楽のほうに気をつけていたので映像の悪さはそれほど気にせずに鑑賞できた。

映画『楽聖ベートーヴェン』(1937年)も同じ年の映画である。『月光の曲』ほど映像は乱れてない。ベートーヴェンの音楽への情熱を与えるジュリエットは他の人と結婚してしまう。しかしジュリエットはベートーヴェンへの想いを断ち切ることができなかった。ジュリエットのことを知りつつもベートーヴェンに友人として無償の愛をささげるジュリエッタの妹のテレーザ。ベートーヴェンは耳が次第に聞こえなくなり貧しさと絶望のはざまで作曲をつづけついに倒れ亡くなってしまう。

その場その場にに応じてベートーヴェンの音楽を耳にすることが出来る。

今年、2020年がベートーヴェン生誕250年の記念すべき年とのことです。