【池部良の世界展】 (早稲田大学演劇博物館)

俳優の池部良さんが亡くなられて三回忌ということで、早稲田大学演劇博物館で「~不滅の俳優~池部良の世界展」が開催されている。チラシに中村歌右衛門さんの楽屋でのお二人の写真が載っていたのでこれはお珍しいと近寄って見させてもらった。

歌右衛門さんとの写真は池部さんが初めて歌舞伎座の楽屋を訪ねたときのもので、1951年2月、4月に歌右衛門さんは六代目を襲名するので襲名の2ヶ月程前であろうか。3枚あって2枚は歌右衛門さんが八橋(「籠釣瓶花街酔醒」かごつるべさとのえいざめ)の花魁姿である。歌右衛門さんはほんのりとした品を秘めた美しさで、池部さんは若かりし頃もダンディーである。もう一枚は楽屋部屋でお二人火鉢の前で。大切に保存されていたようで歌右衛門さんの署名もあり素敵な記念すべき写真である。この時のことは、池部さん「銀座百点」(2010年10月号 銀座八丁おもいで草紙)に書かれている。

三島由紀夫さんが池部さんを絶賛していたという文章も読むことができた。

『映画芸術』(1971年2月号)「対談 三島由紀夫・石堂淑朗 戦争映画とやくざ映画」

『日本残侠伝 死んで貰います』の池部さんに対し <他人のためにやっていることを、自分のこととしている・・・・何というか、自分の中に消えていく小さな火をそっと大切にしているようなあの淋しさと暗さが何ともいえない> と語っている。

やくざ映画に出るきっかけとなったのは、篠田正浩監督の『乾いた花』のやくざ役を俊藤浩滋プロデューサーが見て懇願して『昭和残侠伝』に出てもらったそうだ。『乾いた花』は加賀まりこさんの衣装が森英恵さんのデザインで、虚無的な若き女性の着こなしを見たいと思っていた作品である。その作品が池部さんの次のスッテプとなった作品とは、早く出会いたいものである。

その他、池部さんへのインタビューの録音テープも流されているが、落ち着いて聴けないのが残念である。ポスターも近頃映像ではみれないであろう珍しいものもある。池部さんは前面に出て個性的に演じるタイプではない。女優さんの相手役というイメージもある。無理となればさりげなく身を引く引き方が上手い。そういう人がスウッーと前に出たときの男気が絵になるのかもしれない。

演劇博物館なので、映画関係の展示はまれである。時代別演劇関係の展示や『八代目市川団十郎展』もあり、いつも幾つかはパスしている。金~日曜日の1時から4時までは解説して下さる方がおられとの事。一度利用してみたい。