歌舞伎座ギャラリー

歌舞伎座ギャラリーで門之助さんと笑三郎さんのトークショーにおじゃまして、猿之助さんの特別映像『宙乗りができるまで ~新臺猿初翔(しんぶたいごえんのかけぞめ)~』があるのを知りました。さらに<歌舞伎夜話アンコール>ということでトークイベントの短縮の映像もみれるということで、八月末までは隼人さんの映像が見れます。

もう一つ、ドキュメンタリー映画『パリ・オペラ座 ~夢を継ぐ者たち~』も9月1日までですので、これも組み合わせて出かけました。

宙乗りができるまで ~新臺猿初翔(しんぶたいごえんのかけぞめ』は、新しい第五期歌舞伎座2016年6月、『義経千本桜』での初めての宙乗りまでの裏の仕事の様子です。三階席の花道上を取り外し、鳥屋(とや)を作りそこに宙乗りをした役者さんは入り幕が締められ、楽屋にもどるのです。新しい歌舞伎座の座席が軽くなり移動にはその点は楽になったそうです。

見ていますとスタッフのかたは大変だなあと思いました。猿之助さんも宙乗りは死と隣り合わせですからといわれていましたが、その安全の点検も神経が張りつめることでしょう。一度、吉右衛門さんが、石川五右衛門の葛抜け(つづらぬけ)の時、宙で葛が開かず下におろして葛から出て、葛を背負い、花道を飛び六法で引っ込むということがありました。何ごともなく安心しましたが、やはりあたりまえが常にとは限りません。

猿之助さんは正確には、スタッフやお弟子さんが先に宙乗りをしましたが、新しい歌舞伎座でお客さまの前で宙乗りをしたのは自分が初めてなわけで、大変嬉しいですといわれ、さらなる宙乗りの工夫に努めたいと意欲をみせます。

そして出て来ました弥次喜多コンビ。花火の打ち上げの宙乗り。二人を吊るしているワイヤーが絡まらないようにその間隔と速さの調節や、染五郎さんが猿之助さんの足をつかむタイミングとか、空中回転などを試します。下で金太郎さんと團子さんが「ウオッー!」と声を発します。慎重にスタッフ、弥次喜多コンビの息を合わせていきます。

染五郎さんは高所恐怖症なのだそうです。アドバイスをと言われて猿之助さん真面目な顔で「危ないことはしないことです。」には笑いました。それでもやってしまうのが弥次さん気質でしょうか。

この映像のあとに、なんというタイミングの良さでしょうか。『歌舞伎を演じる馬』の映像が映りました。歌舞伎に登場する馬の名場面を集めていました。『一谷嫩軍記 陣門・組討』『近江のお兼』『実盛物語』『馬盗人』『矢の根』『當世流小栗判官』。役者さんに合わせてとその場の空気をつくったり、役者さんを乗せ花道を走ったり、碁盤の上に乗ったりと、大きな映像でみると脚などもしっかり見え、その動きの絶妙さはあっぱれです。映画『旅役者』の表六、仙太コンビに見せてあげたいところです。闘志を燃やすことでしょう。

その他常時放映されている『歌舞伎の華 傾城たち』『白波五人男 稲瀬川勢揃い』の映像もあり見どころ多数ありでした。重い鬘と衣装の出で立ちで、身体をどう動かしているかがわかります。そばには、傾城の衣装も展示され、白波五人男での傘は実際に使うことができ、形をきめての写真もオッケーです。一人でも係りのかたがシャッターを押してくれます。

隼人さんのお話は、浅草歌舞伎六年目で電車通勤にも慣れた事、忠臣蔵の力弥を田之助さんに教えを受けたときにあわてた事、『ワンピース』で大きなお役をもらった事、ラスベガス公演の事など爽やかに話されていました。

歌舞伎ギャラリーに一度行ってみようかなとおもわれるかたは、この映像も予定に入れるとより楽しいものになるかとおもいます。9月の特別映像は染五郎さんの『大物浦』の舞台裏をみせられるようで、「歌舞伎夜話アンコール」は前半は巳之助さんで、後半は米吉さんです。二つを見るためには、それぞれの上映時間を調べて組み合わせて下さい。

帰り際には、しっかり大道具の馬にも乗りました。これをかぶると言いますか、背負うといいますか、そして二人の息を合わせ、さらに役者さんを乗せるのですから、あらためて馬役者さんの技には拍手です。

ドキュメンタリー映画『パリ・オペラ座 ~夢を継ぐ者たち~』については、他のドキュメンタリーバレエ映画と合わせて書ければその時に。

新橋演舞場でOSKの『レビュー 夏のおどり』を観ました。歌舞伎と反対に男役の方の動きが気になり観ていましたが素敵でした。第一部は『桜鏡~夢幻義経譚(ゆめまぼろしよしつねものがたり)』で、高世麻央さんの義経と桐生麻耶さんの弁慶コンビが光っていました。桐生さんに弁慶の大きさがあり、女性でこれだけの弁慶はいないのではと思いました。初めてなので実際のところ比べられないのですが。レビューもこれだけ見せれるのだと感心しました。

出演のかたがたが、舞台装置の移動もして、その動き方が男性的できびきびしていて気持ちよかったです。今回は、高世麻央さんと桐生麻耶さんを中心に観させてもらいましたが、ラインダンスも超元気いっぱいで楽しく、スカッとしました。大人の男性も多かったです。秋めいた夏のおわりのような輝きでした。