信州の旅・御代田(4)

長野駅からしなの鉄道は軽井沢までいきますが、その途中の御代田に『真楽寺』があるのを思い出しました。映画『ゆずり葉の頃』でロケ地となったお寺さんです。そこへ寄ってから軽井沢へ向かい、横川へのバスを調べたところ12時までには横川に着けます。となると遊歩道<アプトの道>の道を歩いてレンガ造りの『めがね橋』へ行けます。帰りは坂本宿を通って横川へ帰れれば、葛飾北斎さんの歩いた道を少し歩くことが出来るわけです。いいではないですか!

<アプトの道>は、かなり前に友人たちが歩いていて地図を貰っていたのですが、先に行きたい所優先で計画しなかったのですが、今回上手くはまってくれました。

真楽寺』へは御代田駅から徒歩1時間弱なので約二時間の時間をとり、御代田駅から行きはタクシーを使い、帰りは徒歩としました。リュックはコインロッカーがなく御代田駅で預かってくれました。

タクシーはお寺の境内まで運んでくれましたので、映画の主人公の市子(八千草薫)さんは藁葺屋根の仁王門から入って行きますが、こちらは仁王門から出ていくかたちとなり、少し味気なかったです。映画『ゆずり葉の頃』の映像そのままの三重塔です。こちらの塔は、自己主張の少ないすっきり安定形で時間の長さを思わせます。

このお寺は浅間山の噴火を鎮めるように祈願して創建された古刹です。観音堂には本尊聖観音菩薩が安置され別名「厄除観音(やくよけかんのん)」と呼ばれています。屋根は残念ながら銅板葺きです。茅葺を維持することが今は大変な時代です。

そして、観音堂と三重塔から下がったところに、『ゆずり葉の頃』でも重要な場所である湧き水で水の美しい<諏訪明神出現大沼の池>があります。映画では<龍神池>といわれ、ここで東京から疎開してきていた市子と真楽寺の息子である謙一郎のほのかな心のやりとりがあり、健一郎は龍神のようにここから飛び立つと語り、市子に飴玉を手渡します。

その想い出を市子に呼び覚ましたのが、世界的画家となった健一郎の個展が軽井沢で開かれているということを新聞記事でした。その新聞には、市子と思われる、赤ん坊を背負った少女の絵「原風景」が載っていました。もう一枚の印象的な絵は、龍神が空に向かって力強く進んでいく作品で、そこには三重塔も描かれています。

ここから市子の人生での思い残すことのない次への一歩を踏みだすまでの静な時間が湧きだすのです。本当に綺麗な水の池で、八千草薫さんの姿が映っていますが、周りの木々も全て水が吸い込むように水面に写しだし、水草と戯れているようです。どこからどのように撮影したかがわかりました。

『ゆずり葉の頃』を見直しましたが、丁寧に語られる台詞のひとつひとつの間がなんとも言えない味わいでした。(余談ですが、映画『お父さんと伊藤さん』のセリフの間もちょっと気に入りました。) 映画『ゆずり葉の頃』の涙

<諏訪明神出現大沼の池>の碑によりますと、昔近江の伊吹山の麓に、甲賀という大富豪がいて太郎、次郎、三郎の三兄弟がいました。父が亡くなる前、三郎に全てを任せると言い残したため、二人の兄は三郎を殺すことにします。三郎は兄たちによって深い穴底に落とされ、横道を進んで行くと大沼の池にでましたが、水に映った姿は蛇体でした。そこに住むうちに大きくなり、そこから諏訪湖に移動して諏訪明神となり、一年に一回大沼におみ渡りされるのです。

そうした言い伝えが<龍神祭り>となって、勇壮な甲賀三郎龍の舞い姿となっています。

 帰りにはお寺の後方には浅間山がくっきりと見え、駅までは平坦な道で40分くらいで行き着けました。そして、軽井沢へ至りバスで横川へと向かいお昼には横川に到着でき予定通りでした。

軽井沢と横川間のバスで<めがね橋>に停車するのは、期間限定で、上下線の一本づつです。ほとんどの期間、徒歩の人は横川から往復歩くしかないのです。