映画『追憶』・ 映画『劔岳 点の記』

能登半島の旅の輪島で、映画『追憶』のロケ地マップを手にいれました。<刑事、被疑者、容疑者として、25年ぶりに再会した幼なじみの3人。彼らには誰にも言えない過去がありました。>

11月3日からDVDレンタルで新作としてレンタル開始で、開始日に借りたのは初めてです。ロケマップで見ても、旅の途中の風景は入っていないようですが、一応手にしてしまったので観ることにしました。

降旗康男監督と撮影の木村大作さんとは9年ぶりのタッグだそうです。どちらかといいますとこのお二人の映像美が見たかったのが強いです。主演は、岡田准一さんですが、降旗監督と木村さんの映像に一人立つには少し早いようですが、動きの少ない中でよく頑張られたと思います。観るほうは岡田さんの立場はわかるのですが、小栗旬さんと柄本佑さんについては分からない部分があり、柄本さんは思い描いたよりもいいヤツで、小栗さんはかなりこちらの思いがぐらつくほどマイペースで、それぞれのキャラを上手く発揮してくれ、終盤に向かい、三人の人間性も見えて来ました。観ている時はウムと思いこれはとインプットしますが、かすかな表情を逃がさず捉えているなあと感じました。

ヒューマンサスペンスということなので内容は書きませんが、何か大変な経験をした子供たちが大人になって顔を会すというのはよくあるパターンですが、自分から大変な環境を打破しようとした子供たちが、大人になってもっと困難な状況に陥るというのはやるせないです。それがどう展開するのかが見どころでもあるのですがヒューマンの方向性にいきました。

映像に出てくる輪島の間垣(高さ約5メートルの苦竹をすき間なく並べた垣根。冬は強い潮風から家屋を守り、夏は暑い西日をさえぎる)などは、その地の風土に合った生活の知恵の美しさです。

最初に車に子供三人と運転する人(吉岡秀隆)が乘っていて、運転する人が、蛍光灯を変えて来るからと資料館のようなところにいくのですが、ここは<時国家(上時国家)>で、平時忠さんを祖とする800年続く旧家で公開されているようです。本家と分家があって、上時国家と下時国家と呼ばれているのです。なるほどここであったのかと納得です。

次世代が、降旗康男監督と木村大作キャメラマンに挟まれて仕事ができた記念すべき映画と言えるでしょう。

原案・脚本・青島武、瀧本智行/出演・岡田准一、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラ、吉岡秀隆

『追憶』は富山ロケもしていまして、となれば次は木村大作キャメラマンが監督した映画『劔岳 点の記』(2009年)となります。立山連峰や剱岳が豊富に贅沢に映されている映画です。立山に行かなくてはと思ってしまう映画です。

「点の記」は、三角点など基本になる位置を測量して設定し、その記録を書き記すことを指すようです。劔岳の点の記なのですが、1906年(明治39年)の実話で、まだ誰も登ったことのない剣岳を踏破し地図をつくれとの軍の威信をかけての命令です。その指令を受けるのが参謀本部陸地測量部の測量手・柴崎芳太郎(浅野忠信)です。先輩の元測量手(役所広司)に相談し、地元の山の案内人・宇治長次郎(香川照之)を紹介されます。

立山は山岳信仰の山で立山曼荼羅といわれていて、剣岳に登るなどとんでもないと反発されたりもしますが、案内人の宇治長次郎の協力のもとなんとか下調べもでき、紫崎は無理であると判断します。軍部は日本山岳会も踏破を目指しており精神論など持ち出して威嚇し、実行するしかありません。

紫崎は、他の測量夫二名(モロ師岡、松田龍平)と長次郎の集めてくれた村人三名の協力のもと雪崩などにも会いつつ、行者(夏八木勲)の「雪を背負って登り、雪を背負って降りろ」の言葉を胸に劔岳の頂上に立つのでした。

軍部のお偉方には、本当に腹が立ちます。じゃ、自分で行ってごらんよと言いたくなります。紫崎が静かなだけ、こっちが憤ってしまいます。紫崎や長次郎はあくまでも冷静で、自然の驚異を知っているだけに人間の感情などに左右されないのかなと思ったりもしますが、その冷静さのため観る側は山自体をじっくりあじわうことができます。一歩一歩一緒に歩いています。そして適確な判断で速く下りましょうの言葉にほっとしたりします。

さらに腹が立つことには、頂上には修験者の錫杖(しゃくじょう)の頭の部分が残されていて初登頂ではなかったのですが、それを聞いた軍の上層部は紫崎達のやったことをなかったことにしたいとまでいうのです。現場を無視してご都合主義もいいところです。

しかし、木村大作さんの映す立山連峰や劔岳はそんな人間界のあほらしさを跳ね飛ばす悠久さと威容さがあります。木村大作・名キャメラマンならではの監督作品です。音楽も抜群でした。

列車に乗降シーンなどは明治村で撮影したそうで、東京の電車の神田橋停車所なども明治村だったのでしょうか。あったようななかったような記憶が薄いです。愛知の明治村に再度行く予定が台風22号のために『長沢芦雪展』に変更したのです。行く機会があったときは、じっくり見てこなくては。

エンドロールは、「仲間たち」として、監督などの名称はなく名前だけが流れます。最後に、 原作者 新田次郎 「この作品を原作者に捧ぐ」 とあります。木村大作監督らしい計らいです。ここでは、蛇足かもしれませんが紹介させてもらいます。

監督・撮影・木村大作/原作・新田次郎/脚本・木村大作、菊池淳夫、宮村敏正/音楽監督・池辺晋一郎/出演・浅野忠信、香川照之、モロ師岡、松田龍平、螢雪次郎、仁科貴、蟹江一平、仲村トオル、笹野高史、國村隼、小澤征悦、宮崎あおい、鈴木砂羽、石橋蓮司、井川比佐志、夏八木勲、役所広司