『三代目尾上菊五郎改メ、植木屋松五郎!?』

インパクトの強いチラシを目にしました。『三代目尾上菊五郎改メ、植木屋松五郎!?』 ー千両役者は盆栽狂 

 

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「さて尾上菊五郎いよいよ一世一代のを仕り、これより寺嶋へ引き籠りまして、松の隠居、親どもの名をつぎまして松緑と改名仕り、四季折々の草花もご覧に入れたてまつりたく」(終生のライバル・七代目市川団十郎による、尾上菊五郎一世一代口上)

 

さいたま市大宮盆栽美術館での企画展です。11月29日までですのでさっそく行きました。驚いたり、感心したり、、うなずいたり、そういうことなのかなのかと沢山のインパクトをもらいました。

三代目菊五郎さんは歌舞伎に新しい風をおこしたようですが、気が短く自信家でもあったようで、さらに自分のやりたいことは実行するタイプの方だったようです。天才肌だったのでしょうか。植木屋松五郎(植木屋)、菊屋万平(餅屋)の別名があり、企画展は、植木屋松五郎を浮世絵から探られています。

向島の寺嶋村に住んだので寺嶋名を名乗られたのは知っていましたが、三代目さんは現在の向島百花園の西側の「松の隠居」と呼ばれる植木屋を買い取り「寺嶋の松の隠居」と呼ばれたりもしています。近くには「菊の隠居」もあり、向島百花園は亀戸の「梅屋敷」に対して「新梅屋敷」とも呼ばれています。当時の庶民が草花や木々を楽しんでいたことからそういう名所ができていったわけです。

話しが飛びますが、こうした江戸庶民の遊行を葛飾北斎さんらが浮世絵に表し、それが西洋へそれこそ飛んでいって西洋絵画に影響を与えるわけです。それは今、上野の美術館をにぎわせております。もちろんそちらの見物客の一人にもなりました。

さて、三代目さんの行動から歌川国貞の『きくのさかゑ』から、植木屋「菊屋」の前の浴衣の男性が三代目を現わしているのではないかという謎解きから始めるという心憎い運び方です。もう一人三代目として登場させている人物も探りあてます。二人登場させているのです。その二人を探す手立ては、三代目さんは役者ですから白塗りです。

人気役者と植木との組み合わせ浮世絵をテーマごとに紹介してくれ、鼻高か幸四郎(五代目)さんが、植木などを背負って歩く吊り台を二個並べて品台にして商品を並べて悠々と煙草などを吸っています。吊り台の利用方法が面白いです。たくさんの江戸の物売り、水売り、アサガオ売り、金魚売り、虫売りなどに役者さんが扮されて、これが姿形がいいのです。

極め付きは、ライバル七代目団十郎さんとの<松切り>です。三代目さんは、中村座で『仮名手本忠臣蔵』をされ、川原崎座に移りここで大当たりをして鼻高々です。一緒だった七代目団十郎さんと三代目三津五郎さんが市村座に移り『仮名手本忠臣蔵』の二段目<松切りの場>を上演し大当たりです。松を菊五郎さんに見立てられたわけで観客は大喜びしたのでしょう。昨年の国立劇場で10月から12月にかけて三カ月『仮名手本忠臣蔵』を上演し、初めて<松切の場>を観ました。研修発表会でもやりましたので、参加された役者さんは貴重な体験をされました。

三代目さんは、そのあと中村座にもどり再度『仮名手本忠臣蔵』を上演しますが当らなかったようです。芝居小屋が多く、ライバル役者さんも多かったわけで見物のお客さんにとっては、江戸歌舞伎黄金時代でもあり話題の多いことだったでしょう。

三代目さんは役者をやめて植木屋にはならず、両方兼ねたようです。ただその後役者をやめますが大川橋蔵の名で再度役者に復活します。そして、上方からの途中掛川で病死します。掛川の広楽寺は音羽屋の菩提寺・浅草今戸の広楽寺の分家元ということで、掛川の広楽寺に埋葬され、俗名・植木屋松五郎とも記されました。今も碑があるようですが当時のものではないようです。

浮世絵をさらに細かく見る目をもらいましたし、単なるインパクトだけではない実質的な検証とその展開が面白い企画展となりました。

盆栽美術館ですから盆栽のことも少し興味をひかれました。奥の深い職人芸です。見方のひとつとして、下から覗いてみてくださいとありましたので、下からみますと、大きな木をスマフォなどで拡大して撮ったりしたときの絵でした。剪定してますから、もっと芸術的な枝ぶりでそこから青空がみえます。

近くには盆栽村もありまして、埼玉県大宮と盆栽の関係は、江戸時代、千駄木の団子坂周辺は植木職人が多く、盆栽の専門職人も住んでいたのですが、関東大震災によりもう少し田舎へということで大宮に移り、色々な変遷を経て今にいたっているわけです。

 

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今回は盆栽美術館だけで埼玉の大宮から神奈川の大山へと向かいました。江戸の観光は続きます。