映画『陰陽師』『陰陽師Ⅱ』(1)

映画『陰陽師』に至る。どうもまだ霞んでいて観るのを伸ばしていたが、伸ばしただけあってどうして平安京の貴族社会の時代の中で陰陽師が重用されたのか納得でき始めた。

映画『恋や恋なすな恋』の中で、京の天地に異変が続く。東では富士山が爆発したとの情報が流れ、京の空にも白い虹が出たり、金環日食のような現象が起きたりする。現代でも地底のことは予想できない部分が多いのであるから、平安時代はもっと不安がいっぱいの時代である。その時代の天文学の権威が加茂保憲で、その弟子に安倍保名と芦屋道満がいて、この二人のうちだれが師の後を継ぐかという話しが出来上がるわけである。

そういう時代を経て、安倍保名から子の安倍晴明の時代となる。そして安倍晴明を主人公とした物語ができる。その一つの形が夢枕獏さんの小説『陰陽師』で、それを原作として、歌舞伎になったり映画となり、現代とは異なった世界へ誘ってくれるわけである。そのブームからかなりずれての参加である。芦屋道満は晴明のライバルともされ、この辺は定かではない。架空の人物ともいわれ、悪しきライバルとしての位置にいる。

歌舞伎などでも、亡くなっている人を蘇らせて、それを操ったり乗り移ったりして悪事を働くという話しが出てくる。今回、大きく一つ解かったのは、京都には封じているものが沢山あるということである。亡くなったからそれでお終いですまないのである。その祟りを恐れて封じ込めているのである。関東は武士の作った地域であるから、神として崇めて終わりとしたり、どこか武士的発想であるが、京都の場合は、祟りをおそれて、封じ込めているが、いつそれがよみがえるか分からないという繋がりがある。それが、平安京の成り立ちから続いた貴族社会の名残とも言えるようである。

そこを、押さえると興味の無かった<よみがえり>も、平安時代の人々の畏怖の気持ちが伝わってくるのである。

それを考える材料となったのが、『京都魔界地図帖』(別冊宝島)である。今までなら目にも止らぬ内容である。本屋の歴史関係のところでスーと手が伸び気に入った。映画『陰陽師』『陰陽師Ⅱ』が、俄然面白くなる。

平安京は桓武天皇が遷都される。その前は、長岡京に遷都されるが、遷都の中心的役割をした藤原種継が暗殺される。その首謀者として桓武天皇の弟の早良親王(さわらしんのう)とされ、早良親王は自ら命を絶つのである。そのことがあって、長岡京の遷都を止め、平安京遷都となったのである。

今までの権力争いや、早良親王のあとの異変も大きく影響していたのであろうが、平安京は南は朱雀、北は玄武、東は清龍、西は白虎に守られた都なのである。北東は魔が入りやすい方角の鬼門で、それを封じるために比叡山延暦寺が位置している。

比叡山を創建したのは最澄で、桓武天皇は奈良仏教の勢力が次第に強くなり、そのことも考慮し、唐から新しい仏教を学んできた最澄や空海を認めたのである。

映画『陰陽道』では、それだけ魔界から守られた京にも、早良親王の霊を蘇らせる者が現れ、安倍晴明の出番となるのである。怨霊や物の怪などがでてくればそれを封じる結界が作られるが、安倍晴明の場合は五芒星(ごぼうせい)が結界となる。これも天文学や占星術などが絡まり合って一つの知識とされたのであろうが、これ以上はお手上げで、安倍晴明といえば、五芒星が結界となり、守ってくれたり、悪霊を封じ込めてくれるものと思って、はらはらどきどきしながらやったーと思うことにする。

映画に到達しなかった。結界を張られているのかもしれない。