歌舞伎座十一月 成駒屋襲名披露公演(1)

八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助襲名披露の歌舞伎座二ヶ月目です。

最初の『四季三葉草』で、ムッとくることがありました。梅玉さんの品格ある翁の舞いのところで団体客が入ってきたのです。二回に分けて。気分はメチャクチャです。翁と千歳との舞いの変わり目あたりで入場願ってもいいのではないでしょうか。さすがであると気持ちよく観ていた気分の集中力が止ってしまいました。お囃子連中のかたが、その雰囲気を察したのかどうかはわかりませんが、千歳の舞いからひと際大きく鼓が入ったように思え気をとりなおそうと努めました。

『四季三葉草』は『式三番叟』からもじって、親子四人の襲名に合わせての変名なのかなと思ったところ、江戸時代からきちんとありました。翁は松、千歳は梅、三番叟は竹と草花にたとえ、沢山の花々が詞にでてくる清元です。

最初の風格が壊され、なんとか扇雀さんの千歳と鴈治郎さんの三番叟で持ちこたえましたが、鴈治郎さんの舞いでは、十月の新橋演舞場での『GOEMON』での秀吉(鴈治郎)の役のあつかいの軽さに疑問があったので、そのことをよみがえらせてしまいました。仕切り直しがしたい演目でした。

年を重ね過ぎたためでしょうか、パフォーマンス先行的なものに遭遇することが多く、急激に冷めてしまう自分がいます。気にしなければよいのでしょうが浅いなと観る必要性もないなと思ってしまうのです。困ったことです。

毛抜』は、染五郎さんの愛嬌を期待していたのですが、どうしたことかその愛嬌が生きず、染五郎さんの荒事の今後に期待します。門之助さん、高麗蔵さん、亀鶴さん、彌十郎さんが脇をしめます。高麗蔵さんの近頃の台詞がすっきりしたなかに味わいがましてきました。

祝勢揃壽連獅子』(せいぞろいことぶきれんじし)は、新芝翫さんの狂言師と親獅子に先代芝翫さんの踊りを思わせるような基の静さがすっくと立った感じで観ていて気持ちをすきっとさせてもらいました。石橋物ということもあって間狂言の後に、藤十郎さんの文殊菩薩が出てこられ、奈良で仏像を見てきたばかりでしたので、その冠の飾り具合と雰囲気に厳かさがあり、脇には昌光上人の梅玉さんと慶雲阿闍梨の仁左衛門さんが品よくひかえ、その絵のなかに若手のお坊さんの萬太郎さんと尾上右近さんが加われたのは幸運でした。

子獅子の橋之助さん、福之助さん、歌之助さんは三人息を合わせ、親獅子の芝翫さんに踊り手としていどみそれぞれの今の力を発揮され、芝翫さんは三人の勢いをしっかり受けとめられ親獅子の威厳をみせました。

加賀鳶』(盲長屋梅加賀屋)は梅吉の幸四郎さん、松蔵の梅玉さんを中心に<本郷木戸前勢揃い>はまさしく勢揃いで、粋をみせます。短い出で動きも少ないだけに粋を見せるのが難しい経験の差の出る場面です。

幸四郎さんの竹垣道玄と秀太郎さんのお兼のコンビは以前にも共演されて好演でしたので質店伊勢屋のゆすりの場などは手慣れた悪党ぶりです。その小悪党道玄も松蔵に殺しの証拠を突き付けられ太々しく退散。加賀藩の赤門前での暗闇での捕り物は可笑しさもありますが様式美になっていたのが印象に残りました。

樋口一葉さんとご縁のある質店伊勢屋さんは昨年から公開されています。現代にも残る場所と地名などリアルに楽しいめる作品です。

修業の足りない雑念の多い観劇となりました。