『演劇人祭』

  • 五年ごとに行われている日本演劇協会の主催による『演劇人祭』である。今年は創立七十年記念である。1951年(昭和26年)に設立されてた演劇にたずさわる人たちの団体で、初代会長・久保万太郎さん、二代会長・北條秀司さん、三代会長・河竹登志夫さん、そして四代現会長・植田紳爾さんの挨拶から始まった。(総合司会・葛西聖司さん)

 

  • 日本演劇に貢献された15人の演劇功労者の方々の表彰式があり、配られたパンフレットに記された年齢をみ、皆さんお元気で活躍されておられるので心強いかぎりである。石井ふく子さん(プロデューサー)、辻亨二さん(舞台音響家)、小田島雄志さん(翻訳家)、八千草薫さん(俳優)欠席、坂田藤十郎さん(歌舞伎俳優)、嶋田親一さん(演出家)、花柳壽應さん(日本舞踏家)、仲代達矢さん(俳優)、吉井澄雄さん(舞台照明家)、黒柳徹子さん(俳優)欠席、草笛光子さん(俳優)、藤田洋さん(評論家・逝去・奥さまが代理授与)、横溝幸子(評論家)、ジェームス三木さん(劇作家)、水落潔さん(評論家)

 

  • 次の座談会の司会をされた渡辺えりさんは『有頂天団地』で着た和服で登場で、草笛光子さんも同じ戯曲の『隣人戦争』で舞台に立たれたことがあり、演劇の流れも次の世代につながっているのを感じさせられる。今はかつてのスター演劇が無くなってきていてアンサンブルの演劇性が強くなってきている。歌舞伎もアニメを題材にするようになったのであるから演劇もこの先大きく変わっていきそうである。そんな中、座談会はG2さん、横内謙介さん、市川猿之助さんで司会の渡辺えりさんも歌舞伎の演出をしたことがあるので、大変盛り上がる。

 

  • 歌舞伎の練習の短さとか、今日出来上がって渡したセリフや歌が次の日には完璧に動きもできていて驚いたなど、ゾンビの世界といわれる。先代の猿之助さんの時には、練習が初日の幕前に終わり、そのまま本番とか、今であればブラックといわれそうな世界である。それだけ新しいことを取り入れるということは大変ということなのであろう。G2さんは、絵コンテもなく衣裳さんがこれこれの衣裳と口頭で伝えられてチンプンカンプンなのを福助さんが、それはこういう衣装でと通訳してくれたなど沢山の裏話がでてくる。

 

  • 横内謙介さんは『ワンピース』のとき、これで歌舞伎関係者から総スカンクで、自分の劇団があってよかったといわれる。猿之助さんは歌舞伎は歌舞伎役者にとって皮膚感覚になっていて、先輩たちが残してくれた公式が沢山あり、この芝居にはこの公式とこの公式を使えばよいと組み合わせていくと。それを受けて渡辺えりさんが引き出しが沢山あるのよねと。他の演劇も引き出しはあるのでしょうが、歴史が長いだけにその数が半端ではなく、歌舞伎界という組織全体で継承してきたという強みなのであろう。歌舞伎と他の演劇人とのコラボはこれからも続きそうである

 

  • この座談会から祝賀芸能へと移る。新派『朗読 北條源氏ー六條御息所ー』 (水谷八重子、波乃久里子、喜多村緑郎、河合雪之丞)雪之丞さんの語り手のみぐさを、語り手のときとみぐさのときの声質をかえての朗読が効いて聴きごたえある世界であった。 宝塚歌劇『すみれファンタジー ー宝塚歌劇105周年 名曲を綴ってー』 観ていないので歌になじみがなく眺めているという感じになってしまうが、やはり華やかである。葛西聖司さんが、読むのが大変とおもいますがといわれたが、名前の読み方が難しい。(凪七瑠海、暁千星、麗泉里、風間柚乃、天紫珠李、彩音星凪、結愛かれん、礼華はる、羽音みか)

 

  • 地唄舞『』(坂東玉三郎) いつ観られるかわからない『雪』に逢えた。傘の扱い方にさらなる想いを込められたように見えた。 舞踏『七福神船出勝鬨』(西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黄、山村友五郎)日本舞踏会のかたが流派を越えて5人で「五耀會」を結成されている。素踊りなのであるが五人で五福神の様子を現わし最後に二神を加えて五人で七福神を踊るという試みである。色々な工夫ができるものなのである。 半能『石橋』(観世三郎太、観世清和) 獅子のでる後場だけなので半能ということである。赤獅子と白獅子が登場。面をつけているので人間界と違う世界という遮断差がある。最後は千秋万歳を祝って舞い納めるということで、『演劇人祭』も目出度く幕がおりる。

 

  • 演劇の様々な一端を感じることができ、平成最後の一月も終わる。さて二月は歩みをゆるめ、積んである映画などのDVDを中心に鑑賞し、整理したいと思うので書き込みもゆるゆるとなる予定である。