ルネサンスから『ダ・ヴィンチ・コード』まで(6)

ヴェネツィア・ルネサンスの祖といわれているのがベッリーニさんで聖母子像を沢山描かれているらしく、『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』チラシの絵「聖母子」がベッリーニさんの作品で通称<赤い智天使の聖母>といわれていて、マリアとイエスの上に雲から顔を出す天使が描かれていてその顔が大きくて赤い色をしているのです。ながめていると<聖>を強調するユーモアさえ感じます。

ティントレットの「聖母被昇天」にも昇ってゆくマリアの周りには羽根をつけた天使の顔が取り囲んで飛んでいます。象徴さを表したかったのでしょうか。

巨匠のひとりであるティツィアーノの晩年の傑作といわれる「受胎告知」が日本初公開でした。マリアに受胎を告げるのが、大天使ガブリエルで純潔の象徴である白い百合を持っていますが、ティッィアーノさんの絵にはマリアの足元のガラスの花瓶に生けられているのが白百合なのだろうと思いました。

<受胎告知>でも、大天使ガブリエルがいなくてマリア一人が描かれているのもあり、どこかに<受胎告知>のヒントはないかなと思ってみるのも面白いとおもいます。

ティツィアーノさんの「聖母子」は、抱かれているイエスの右腕が下がっていて死を意味するともいわれています。マリアの悲し気な眼。

その他の「聖母子」にはマリアが縫い物をしていて、横に立つイエスがハサミのようなものを持ち、これも死を暗示しているのかなとおもわせます。宗教画としなければ普通の親子の日常の一コマで、いたずらな子どもともとれて微笑ましい光景でもあります。

ヴィーナスの絵もあって、裸体のヴィーナスにあわてて何かを羽織らそうとする者がいますが、ボルドーネの「眠るヴィーナスとキューピッド」はキューピッドが掛けようとしているのか取ったのかわからない状態で赤い掛物と悪戦苦闘しているようで、その様子が可愛いいです。

豊満な裸体身のヴィーナスは、多産や繁栄や健康の守り神として、結婚の記念に贈ったり描かせたりもしたようです。ボッティチェリの「プリマヴェ―ラ(春)」もピエルフランチェスコの婚礼のために描かれて、彼の妻のセラミデがモデルで「ヴィーナスの誕生」のモデルも彼女であるとの説があります。セラミデさん、シモネッタさんとの血筋がつながっているそうですので、まあどちらでもいいですが、ヴィーナスの絵に役割があったのは面白いです。

苦手だった宗教画も観方によっては楽しいではないかとおもえるようになったのでルネサンスもまんざらではなかったということです。

さて、その宗教も解釈が色々あるようです。やっと『ダ・ヴィンチ・コード』となりますが、ルーヴル美術館の館長が殺されて、裸になって自分の身体に血で五芒星(ごぼうせい)の印を残していて、館長殺しの犯人とされてしまった宗教象徴学専門のハーヴァード大学教授が謎を解いていくのです。

五芒星(ペンタクル)はキリスト教以前の自然崇拝にまつわる象徴でもあり、男神と女神が力の均衡を維持する世界として、男女のバランスがとれていれば世界は調和がとれていて、バランスが崩れると混沌がおとずれるとしています。そして異教の象徴であり悪魔崇拝とされています。

<シオン修道会>は、コンスタンティヌス帝とその後継者である男性の皇帝たちは、聖なる女性を公然とこき下ろし、女神を永久に消し去ることで、母権的な異教社会から父権的なキリスト教社会への転換をなしとげたと考えています。イエスは優れた預言者で、妻がいてそれが<マグダラのマリア>であったとしていて、小説ではマグダラのマリアはイエスの子を身ごもっていて、その血脈が密かに守られているということがからんでくるのです。

館長は、ダ・ヴィンチの円のなかに内接した手脚を伸ばした男の裸体図<ウィトルウィウス的人体図>の形で亡くなっています。さらに、犯人とされた教授を助けるフランス司法警察暗号解読官である優秀な女性がダ・ヴィンチの絵「モナリザ」や「岩窟の聖母」から謎の暗号の品物を見つけるのです。

十字軍やテンプル騎士団の話し、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の絵の解釈が出てきたりして、小説では<13の金曜日>の説明もありなかなか興味深いです。映画と小説の比較も楽しかったです。

この本と映画のお陰でその関連ツアーが人気になったそうで、DVD『ダ・ヴィンチ・コード・ツアー』では、そのツアーの映像版で旅をさせてもらったのです。

どう解釈するかは別としてティッィアーノさんの「マグダラのマリア」がきます。『ティッィアーノとヴェネツィア派展』(東京都美術館)です。

「マグダラのマリア」の絵はまえにも展覧会できてます。そのとき私は<娼婦>が懺悔していると解釈しましたので、映画館で『ダ・ダヴィンチ・コード』を観たときは架空の話しのミステリー&サスペンスとして観ていました。

宗教は根が一つかもしれませんが、長い間には解釈が多様化したり、時の権力者に変えられたりもします。それでいて神の名のもとに殺し合いもあるのですから、思索できない者はあまり深く関わりたくない分野です。宗教の自由がいいです。・

ロバート・ラングドン教授のトム・ハンクスさんは『インフェルノ』が良かったです。髪は長いより短いほうがいいです。

長いだけで終わり方がこれなのと自分で自分にツッコミをいれています。

クラーナハ 500年後の誘惑』(国立西洋美術館)ギリギリで行きました。ドイツ・ルネサンスはパスでいいかなと思ったのですが、いや~面白かったです。宗教改革のルターさんとも関係があって、事業家でもあり、沢山ツッコミをいれて観てきました。常設展にはヴァザーリさんの絵「ゲッセマネの祈り」もありまて、天使からの光があたる衣裳などがとても綺麗な輝きで描かれていました。

<ルネサンス>はダ・ヴィンチさんの解剖とは反対にどんどん筋肉がつき血が通ってきた感じです。きりがないのでここで一応締めます。