歌舞伎座 秀山祭九月 『曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』

『曽我綉侠御所染』作は河竹黙阿弥であるが、種本が柳亭種彦の「浅間嶽面影草子(あさまがだけおもかげぞうし)である。柳亭種彦といえば「にせ紫田舎源氏」がうかぶが、<にせ>は<偐>。こんな字だったのだ。

『曽我綉侠御所染』は、前半部分が<時鳥殺し>で後半が<御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)に分かれていて、今回は<御所五郎蔵>だけである。

主君に仕えていた、男女が御法度の職場恋愛が見つかり、お家から追い出されてしまう。男は、俠客の御所五郎蔵となり、女は傾城皐月となる。浪人となっても御所五郎蔵は忠儀を忘れず、旧主の浅野巴之丞の借金二百両をなんとか工面しようとしている。この借金、巴之丞が傾城逢州に入れ込んだお金である。そして逢州と皐月は朋輩である。皐月は夫の五郎蔵のために、浅間家を追われたもう一人の男・星影土右衛門にお金を調達したもらうことにする。その条件は、五郎蔵に愛想尽かしをすることである。本心を隠し五郎蔵に愛想尽かしをする皐月。裏切られて激怒立ち去る五郎蔵。

余りの事に皐月は癪がおこり、逢瀬が代わりに皐月の提灯を持って土右衛門の伴をする。五郎蔵は皐月を許すことが出来ず、待ち構えて逢瀬を斬ってしまう。本来は、土右衛門も殺害してしまうのだか、今宵はこれにてでチョンである。

最初に五条坂仲之町で、五郎蔵(染五郎)は子分を連れて、土右衛門(松緑)は剣術師範で弟子を連れての再会の場がある。ここで言葉での皐月に対するさやあてがある。五郎蔵は夫であるから自信がある。この事もあって、土右衛門の前での皐月の愛想尽かしには怒り心頭なのである。この出会いの五郎蔵の子分は五人である。三人までは形になっているが、残り二人がなぜか心もとない。このお二人、廣太郎さんと児太郎さんらしい。前のお三方は、松江さん、亀寿さん、亀鶴さんである。五郎蔵もこの三人の子分なら頼りになることであろう。残るお二人の子分も早く頼られる子分になってもらいたい。このやり取りの仲裁に入るのが秀太郎さんの甲屋女房お松。いつものことながらお見事。女将の意地と色気が期待通りに漂う。

皐月の芝雀さんは、夫のためと自分に言い聞かせているのであろう。土右衛門に急かされながら愛想尽かしの文を書く。そして取りつくひまもない夫・五郎蔵の激怒。高麗蔵さんの逢州が五郎蔵をなだめる。主君の傾城でもあり、五郎蔵はその場を去るが、その場の事情から皐月の代わりをつとめる逢州を手に掛けるとはなんという皮肉なことであろうか。

染五郎さんも松緑さんも、もう少し年齢が欲しい。

五郎蔵と皐月は夫婦なので、<愛想尽かしの文>は<のきじょう(退き状)>で、離縁状ということである。