東北の旅・鶴岡~秋田~五能線~五所川原(4)

羽黒山の五重塔ライトアップツアーも、夏至のころは日が長く、その時間調整が難しいらしい。鶴岡から秋田への列車からの風景、羽越本線の遊佐あたりから、鳥海山が裾野から、山頂まで全ての姿を見せてくれる。美しい。見惚れる。この風景を見られただけでもこの旅は握りこぶしである。そしてしばらく進むと海が見えてくる。秋田までの車窓風景、藤田嗣治さんの壁画『秋田の行事』、これだけで充分フルコースである。

五能線は、秋田から青森までの奥羽本線の東能代から川部までの日本海側を周る鉄道である。奥羽本線と五能線に囲まれた内側は世界自然遺産の白神山地や岩木山などの山、山、山、である。東能代のホームに<五能線起点駅>の小さな看板がある。

 

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五能線は、景勝の良い所で徐行運転をしてくれたり、停車時間を設けて写真を撮る時間を与えてくれる。能代駅ではさっそく、バスケットボールの強い能代工業高校に合わせてか、ホームでバスケットシュートが出来る。残念ながらシュートミスである。

波穏やかな優しい日本海である。十二湖駅などは、降りて行きたい駅名である。

 

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千畳敷駅では15分停まってくれ、発車三分前に警笛を鳴らしてくれる。これは、列車によるらしい。日本海に夕日が沈む鑑賞タイムに走る時間帯の列車もある。調べる方はしっかり調べて乗るのであろう。今回は、予定していた列車が満席で急遽の変更旅となってしまった。千畳敷の前には、大町桂月さんの千畳敷の景観を書いた文学碑と太宰治さんの小説『津軽』の文が彫られている<千畳敷海岸隆起生誕200年記念>の碑がある。

 

大町桂月文学碑

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<千畳敷海岸隆起生誕200年記念>の碑

 

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『津軽』は<木遣から、五能線に依って約三十分くらいで鳴沢、鰺ケ沢とすぎ、その邊で津軽平野も、おしまいになって(略)一時間ほど経つと、右の窓に大戸瀬の奇勝が展開する。この邊の岩石は、すべて角稜質擬灰岩とかいうものだそうで(略)この邊の海岸には奇岩削立し、怒涛にその脚を絶えず洗はれている、と、まあ、、、、。>と、まあ長いので中を省略させてもらった。太宰さんは、五所川原方面から、こちらとは反対に向かってきているわけである。その奇岩の場所で降りれたのも縁であろうか。この先で予想もしなかった、太宰さんとのサプライズの出会いがあった。

鰺ケ沢から五所川原の間で、津軽三味線の生演奏があるという。これは楽しみである。ところが、電車の線路の上を走る振動の音が三味線の音の邪魔をする。車中という空間での楽しみ方もあるが、どうも納得がいかない。他の車両では、放送で聴くかたちとなる。そのほうが音に迫力がある。三味線の音を聞いていると、車窓からの風景が冬景色となる。そんな楽しみ方が終わると五所川原である。

五所川原駅を出てそく観光案内へ。友人がツアーで行った、五所川原でのねぶたの記念館で見たねぶたが圧倒されたと聞いていたので、まずその記念館の場所を聞くためである。<立佞武多(たちいいねぷた)の館>である。駅から歩いても10分以内でホテルからも近い。観光案内のパンフの中に、<太宰治 ブラリ思い出散歩帖 五所川原>の冊子がある。太宰さん関連の散歩コースである。これはいただきである。

ホテルに荷物を置き、歩くコースを検討。<太宰と昭和の「思い出」をみつけてみたい散歩。グルッとひとまわり1時間ちょっとです。>とある。<立佞武多の館>もそのコースの途中である。

太宰は叔母キヱさんを慕っていた。その叔母が太宰の実家のある金木から五所川原へ移るおり、太宰も叔母と五所川原についてきて、小学校入学までを過ごす。その後もしばしば訪ね、戦時中、金木に疎開したときも、叔母のところに寄っている。叔母宅も空襲で焼かれ、<土蔵>が残りそこで友人達と酒宴を開き文学や様々な話をしたようである。

 

叔母の家の蔵の跡地

 

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岩木川に架かる<乾橋>の手前で岩木山を眺めつつ河原を歩き<招魂堂>へ。

 

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7つか8つのころ落ちたという顎のあたりまで水の深いどぶとされる<みずとみどりの小公園>。

 

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芝居小屋<旭座>。この芝居小屋には、廻り舞台もあったという。それぞれ、小説『津軽』、小説『思い出』、随筆『五所川原』に出てくる。また、鎌倉での事件の後始末や結婚の時の衣裳を揃えた津島家のお抱えの呉服屋さんもこの五所川原であった。金木では見せなかった、太宰治の思い出の町といえる。

 

東北の旅・青森五所川原の町(5) | 悠草庵の手習 (suocean.com)